概要
この事件の中心にあるのは、犯人像ではなく、小林順子さんという一人の学生の人生である。英語を学び、海外へ向かう準備をしていた若い女性が、柴又の住宅街の自宅で命を奪われた。
警視庁の公式記録によれば、事件は1996年9月9日(月曜)、母親が外出した午後3時50分ころから119番通報があった午後4時39分までの間に、被害者宅2階で発生した。順子さんは刃物で殺害され、その後自宅に放火された。当日の天候は朝から雨で、肌寒い一日だったとされる。

確認済みの骨格
事件の硬い骨格は、警視庁の公開ページに集約されている。発生日時は1996年9月9日午後3時50分ころから午後4時39分まで。発生場所は葛飾区柴又3丁目の2階建て一般住宅。被害者は英語学科4年の女子大生、当時21歳である。
現場は柴又駅の北西約250メートル、JR金町駅の南約1,300メートル、京成高砂駅の北東約1,000メートルに位置する。柴又駅の東側には柴又街道が走り、観光地として知られる帝釈天や矢切の渡しがある一方、現場のある駅西側は静かな住宅街である。
この二面性が、事件の記憶を重くしている。柴又は多くの人にとって懐かしい下町の名前だが、この事件では、誰かの帰る家そのものが現場になった。
順子さんの時間
順子さんは上智大学で英語を学んでいた。事件は、彼女の学生生活、将来への準備、家族との日常を断ち切った。報道では、海外留学を目前にしていたことも伝えられている。SHIMBUNでは、その点を「悲劇の演出」ではなく、彼女が歩もうとしていた未来の事実として扱う。
未解決事件の記事では、しばしば犯人像、凶器、逃走経路ばかりが前面に出る。しかし本件で最初に固定すべきことは、被害者が「事件の材料」ではないということである。彼女には名前があり、勉強があり、行きたい場所があり、家族があった。
1996年9月9日の時系列
公式に確定できる時間は限られている。だからこそ、分からない部分を埋めるのではなく、分かっている時間を正確に置く必要がある。
警視庁は、母親が外出した午後3時50分ころ以降を犯行可能時間帯としている。
事件現場南側の交差点で、黒色傘をさした黄土色系コートの男を自転車で通りすがった目撃者が見たとされる。
別の目撃者は、傘をささず、被害者宅玄関前で表札または2階付近を見つめていた男を見たとされる。
この時刻までに火災が通報され、事件が発覚する。
警視庁亀有警察署に特別捜査本部が置かれ、現在も情報提供を求めている。
証拠:刃物、ガムテープ、血液
警視庁は、犯人が小型の刃物を使用したと考えている。特徴は、刃渡り8センチメートル以上、刃幅約3センチメートル、先の尖った片刃である。果物ナイフやペティナイフのような類型が例示されているが、これは「推定される刃物類」の説明であり、具体的な製品の特定ではない。
さらに、事件に使用されたガムテープは、静岡県内の工場で1994年1月以降に製造されたものとされる。布粘着テープで、幅50ミリ、長さ25メートル、価格は700円から800円。一般製品より高価で、主に梱包用途で販売されていた。粘着面には植物片、木片、犬の毛などが付着していたことが分かっており、犯人が着衣等を通して外から持ち込んだ可能性がある。
警視庁はまた、犯人は男性で、犯行当時に何らかのけがを負い出血しており、血液型はA型と公表している。ここで重要なのは、証拠が「犯人を特定した」わけではないという点である。証拠は、まだ誰かの記憶、過去の写真、当時の職場や近隣の記録と結びつくのを待っている。
黄土色系の大きなコートの男
警視庁が別ページで詳述している重要な目撃情報がある。犯行時間に近接した時間帯に、現場付近でコートを着た男の目撃情報が2件寄せられている。そのうち一つは2020年中に寄せられた情報である。
目撃情報1は午後3時30分ころ。現場南側の交差点で、黒色傘をさして立つ男が見られた。身長は150〜160センチメートルくらい、やせ型、黄土色っぽい襟付き・フードなしのコート、身長や体格に合わない大きなサイズ、黒っぽいスウェットのようなズボンとされる。
目撃情報2は午後3時55分ころ。現場玄関前で、傘をささず、表札または2階部分周辺をじっと見つめていた男が通行人に目撃された。身長は160センチメートルくらい、中肉または少しやせた感じ。黄土色っぽいコートまたはレインコート、フードなし、襟あり、黒っぽいズボン姿だったとされる。
警視庁は、時間的・場所的関係や着衣等の状況から、2件の男が同一人物である可能性が高いと考え、広く情報を求めている。ただし、SHIMBUNではこの人物を「犯人」と断定しない。重要なのは、当時の写真やアルバム、職場・通学・近隣の記憶の中に、同じようなコートの人物が残っていないかという呼びかけである。
なぜ、いまも呼びかけるのか
2025年9月9日、亀有警察署は発生現場で献花式を行い、柴又駅前でチラシやメモ帳を配布して情報提供を呼びかけた。事件から29年が経過しても、警察は「ささいなことでも結構です」として協力を求めている。
懸賞金は、警察庁の捜査特別報奨金上限300万円と、小林順子さん殺人事件の捜査に協力する会による謝礼金上限500万円を合わせ、上限800万円である。対象期間は2025年9月9日から2026年9月8日まで。情報提供先は警視庁亀有警察署の特別捜査本部、電話03-3607-0110である。
未解明の問い
- 犯人はどのように住宅へ入り、どのように離脱したのか。
- ガムテープの由来、付着物、販売経路から何がさらに分かるのか。
- A型血液、けが、当日の雨、黄土色系コートの目撃情報はどこで交差するのか。
- 事件前後に突然仕事を休んだ、辞めた、転居した人物の記憶は残っていないか。
- 1996年当時の写真・ビデオ・アルバム・通学路の記憶の中に、今なら意味を持つものはないか。
出典と更新方針
本ページは、警視庁公開ページ、警視庁の不審な男に関するページ、3D動画告知、懸賞広告制度の説明、2025年の警視庁写真ニュース、地域・観光資料をもとに、SHIMBUNの形式で再構成したものである。非公式の犯人説、匿名掲示板情報、実名の推測は扱わない。
- 警視庁「柴又三丁目女子大生殺人 放火事件」公式ページ。
- 警視庁「犯行時間帯に目撃された不審な男」公式ページ。
- 警視庁「不審者目撃状況の3D動画」告知ページ。
- 警視庁「令和7年11月号」写真ニュースの情報提供呼びかけ記録。
- 柴又地域の地理・観光文脈について、東京都観光公式サイト等を参照。